佐久平エンゼルクリニック政井先生監修はじめての妊活ガイド ― 夫婦で歩む妊娠へのステップ

妊活ガイド
監修医師 監修

監修 佐久平エンゼルクリニック 政井哲兵先生

2003年 鹿児島大学医学部卒業後、東京都立府中病院(現東京都立多摩総合医療センター)で研修医・産婦人科医として勤務。日本赤十字社医療センター産婦人科、高崎ARTクリニックを経て、2014年に佐久平エンゼルクリニックを開設(2016年法人化)。
資格
日本生殖医学会認定 生殖医療専門医、日本産婦人科学会認定 産婦人科専門医。

教えてくれたのは佐久平エンゼルクリニック政井先生

毎日基礎体温を測っています。
半年ほどのデータをグラフで確認しているのですが、排卵後の高温期が短いように感じます。
妊娠できないのは、そのせいでしょうか?

排卵後に分泌される「黄体ホルモン(プロゲステロン)」は、卵巣に残った卵胞が黄体化することで生成されます。毎月排卵される卵子は異なり、それに伴い黄体も毎回異なるものです。
そのため、黄体ホルモンの分泌量は月ごとに多少の変動があるのは自然なことなのです。
ちなみに排卵期以降、基礎体温が高温期になるのは黄体ホルモンに体温を上昇させる作用があるからです。
そして、妊娠が成立すると、黄体はますます盛んになり、妊娠初期の不安定な時期(胎盤が形成されるまでの時期)を支えるため、しばらく高温期が続きます。
一般的に、黄体期(高温期)が10日以下だと「黄体機能不全」の可能性が指摘されることがありますが、実際には毎月の黄体の状態を完全に証明するのは難しく、黄体機能不全という診断自体も難しいといわれています。
黄体ホルモンがしっかり分泌されるかどうかは、排卵の質と密接に関係しています。
つまり、卵胞が順調に発育して成熟し、質の良い排卵が起これば、その後の黄体も良質になり、黄体ホルモンが十分に分泌されるでしょう。

基礎体温の変動だけで、質の良い排卵だったかなどを推し量ることはできません。中には、過去にお医者さんから「黄体機能不全です」と診断され、hCG注射や黄体ホルモンの薬を処方された方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、黄体機能不全を確実に診断できる医師は極めて少ないと私は考えています。基礎体温の変動に一喜一憂しすぎるのは、現代の不妊治療の観点からはあまり意味がない場合もあります。
ただ、日本では昔からの考え方もあり、決して間違いではないという側面もあります。ですから、高温期が短いからといって過度に心配する必要はありません。

しかし、低温期が20日以上続いたり、10日以下と短かったりする場合、または、以前と比べて月経周期が短くなってきた場合は、早めに不妊治療の専門医に相談することをお勧めします。


基礎体温を測定

  • 黄体期が9日以上→正常範囲→妊活継続
  • 黄体期が9日未満→生活習慣の見直し→改善なし→医師に相談
  • 低温期が長いor 短い→専門医の受診推奨

卵胞の成長→排卵→卵胞が黄体化→黄体ホルモンの分泌

高温期に問題がない周期

良質な排卵→良質な黄体→十分な黄体ホルモン分泌

高温期が短くなりやすい周期

卵胞が未成熟→不良な黄体→黄体ホルモンの不足


妻が妊活に熱心に取り組んでいるのですが、なかなか妊娠に至らず悩んでいます。性生活はもちろん、夫としてどのようにサポートすればいいのか、どんなふうに考えるべきか、アドバイスをいただけますか?

赤ちゃんは、ふたりで迎えるかけがえのない命です。妊娠や出産というと、どうしても女性にフォーカスが当たってしまいがちですが、男性も同じくらい大切な役割を担っています。妊活は、ふたりの問題としてしっかりと捉えることが大切です。そのためには、
まず妊娠のプロセスや不妊に関する基本的な知識を共有することが重要です

妊娠には、卵子と精子の両方が必要で、一方が欠けたら妊娠は成立しません。また、不妊の原因も女性だけにあるのではなく、実際には男性にも原因があることも多く、その割合は男女半々とされています。
ですから、妊娠しないことに対して「どちらかの責任だ」と考えるのではなく、「ふたりの問題」として向き合い、一緒に取り組む姿勢が大切です。お互いに寄り添い、協力し合うことが、妊活を進める上でのポイントなのです。そのためには、まず夫婦でよく話し合うことも大事です。
赤ちゃんが欲しいという気持ちを共有するのはもちろん、具体的な将来像についても意見を交換してみましょう。

たとえば、妊活にどれくらいの期間をかけるか、何歳までに何人の子どもが欲しいか、必要であれば検査を受けるかどうかなど、現実的な計画を立てていくことが大切です。そうすることで、ふたりの気持ちがひとつにまとまり、妊活を進める際の土台となるでしょう。
実際の診療現場でも、ふたりの意見が合わないことが原因で、妊活に対する温度差を感じるカップルに出会うことがあります。
たとえば、奥さんは積極的に検査を受けたいと考えているのに、ご主人が消極的で、診察室に気まずい空気が流れることがあります。妊活は、ふたりで協力し合って進めるものですから、お互いの意見を尊重し合い、妊活に対する歩調を揃えることが、妊娠への第一歩となるしょう。

また、妊活には生活習慣も大きく影響します。たとえば、喫煙は精子に悪影響を及ぼす可能性がありますし、過度な飲酒や偏った食事も健康的とはいえません。
赤ちゃんを迎えるためには、健康的な生活を送ることがとても大切です。ふたりで一緒に食生活を見直したり、適度な運動を取り入れたりすることで、妊娠の可能性が高まるだけでなく、ふたりの健康も守ることができます。
妊活は、単なる子どもを迎えるための活動ではなく、ふたりの健康的なライフスタイルをつくるきっかけにもなるのです。
 
そして何より、妊活そのものをふたりで楽しむことも忘れないでください。妊活がプレッシャーに感じられるときもあるかもしれませんが、ふたりで協力して取り組む時間を大切にし、笑顔やリラックスした気持ちを持ち続けることが、奥さんの心の支えになります。それこそが、夫であるあなたができる最大のサポートなのではないでしょうか。
 
妊娠を目指す過程で大事なのは、お互いが思いやりを持ち、支え合いながら進
んでいくことです。赤ちゃんがやって来る日は、きっとその先にあるはずです。

48%は男性に不妊原因がある

男女別円グラフ
男性のみ 24%
男性両方 24%
女性のみ 41%
不明 11%

妊活の具体的な話し合い項目の例

項目夫の意見妻の意見共通の目標
赤ちゃんが欲しい時期〇年以内△年以内合意の年数
何人の子どもが欲しいか1人2人合意の人数
検査を受けるか受ける様子を見る最終決定
生活習慣の見直しタバコを減らす食生活を見直すふたりで協力

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