有名タレントが卵子を凍結したことをSNSで報告したり、 東京都が費用助成を始めたり。
そんなニュースの影響からか、 近年、卵子の凍結保存に注目する人が増えつつあります。
言葉自体はなんとなく知っているけど、どのような目的でどんな処置を行うのか?
気になるアレコレを、杉山産婦人科の中川浩次先生に伺いました。
卵子の凍結保存とはいつか母になる日のための備え
ソースのテキストから余分なスペースを削除したものは以下の通りです:
卵子の凍結保存とは、卵巣より成熟卵の状態で卵子を回収し、受精操作などを行わず凍結保存を行うと。ひと昔前までは、がんなどの病気治療時に子どもをつくる機能を残す方法として利用されてきましたが、
近年は若い時期の質のいい卵子を長期保存することで、将来の妊娠・出産に備える手段として関心を集めています。
3~4か月サイクルで新しいものが作られる精子と違って、卵子はお母さんのお腹の中にいるときに一生分の量が作られます。
つまり、自分の年齢=卵子の年齢になるわけです。歳を重ねて35歳を超えると卵子の質は
どんどん低下していきますが、凍結保存しておけば卵子は採取した時点から年を取りません。
極端な話、20歳のときに凍結保存しておけば、卵子が持つ妊孕力もずっと20歳のまま。
妊娠率は肉体よりも卵子の年齢で決まるため、卵子の状態が若いほど体が年を重ねても妊娠が叶いやすくなるのです。
ただし、凍結保存した卵子で100%妊娠できるとは限りません。クリニックによっては保存期間に年齢制限を設けているところもあります。
加えてパートナーを見つけた年齢や状況によっては、凍結した卵子を使うより自然妊娠を目指したほうが効率的な場合もあります。
詳しくは後述しますが、「凍結保存=好きなときにいつでも産める手段」ととらえるのではなく、「将来のパートナーが見つかるまでの心のお守り」くらいに考えていただいたほうがいいと思います。
卵子の凍結保存は一人でもできますが、妊娠は二人で行うもの。
せっかくお金をかけて凍結した卵子を生かしていただくためにも、できるだけ早く子どもを持つ時期を視野に入れた、将来設計を立てることをおすすめします。
卵子の凍結保存を選択する理由とは?
根底にあるのは、「母になりたい」という想い。
晩婚化の進行や妊娠・出産よりも 職業上のキャリアを追及する女性が増え、加齢による妊娠への
影響が広く知られることになったことにより、凍結保存に興味を持つ方が増えた一因と思われます。
1,高齢不妊への備え
「いつか産みたいけれど、今は相手がいない」「子ど もを持つ可能性を残しておきたい」という理由。
35歳を過ぎると加齢の影響により、卵子の質と数は年々低下し、異常を持つ卵子の割合が増えていきます。 また、不妊につながる病気にかかる可能性も0ではありません。そのことを危惧し、
「少しでも若い状態の卵子をキープしておこう!」と考える方が多いです。
2,夫が不妊治療を行う場合の備え
妊活を始めた年齢が高い場合、夫の治療を待つ間に女性の子どもを持つ能力が失われてしまう
ケースも少なくありません。
パートナーのためにも少しでも若い卵子を凍結保存し、卵子の質が低下するのを防いでおくことも
選択の理由に挙げられます。
時間に対する余裕ができるため、不妊治療の進み具合に対する焦りやストレスの緩和にも役立ちます。
病院側から卵子の凍結を勧められるケース
- 卵子の数を示す AMH検査の数値が低い
- 病気(がん)の 治療を行うため
AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査とは、卵巣の中に卵子がどれくらい残っているかを調べる検査。
この数値の低さは卵子の数が少ないことを表し、20代であっても妊娠できる可能性は低くなります。
ただし、質の良い卵子があれば妊娠は可能なので、少しでも若い卵子がたくさん採れるうちに
凍結保存をしておくことをおすすめしています。
多量の抗がん剤の使用や放射線治療を行うと、治療の副作用で卵巣や卵子がダメージを受け、
生殖機能が失われてしまいます。
そのため治療前に卵子や卵巣の凍結を行っておけば、治療後に体外受精などの生殖補助医療の
助けを借りて、子どもをもうけることが可能になります。
卵子の凍結保存を決断する前に知っておきたい8つのこと
卵子の凍結保存は誰でもできるわけではありません。
その基準を知るための材料として、日本産婦人科
学会および厚生労働省のガイドラインを元に、杉山産婦人科が取り決めている
「卵子凍結保存についてのルール」をご紹介。
「卵子凍結による将来の妊娠率」のデータも参考にしてみてください。
1,採卵する年齢は原則、 満40歳の誕生日まで
卵子の凍結保存を希望される方で、一番多いのが 30代の患者さん。
20代は比較的少ないように感じています。
これは東京都の助成金制度が40歳未満を対象にしていることと、ある程度の収入があり自由になるお金を持つ方が多いためと思われます。
40歳以上の場合は、卵子の質が低下することと高齢出産によるリスクが高くなることを踏まえ、
原則、お勧めしていませんが、患者さんの背景などを考慮し慎重に検討を行います。
なお、未成年者の場合は、ご親族 の同意が必要となります。
2,凍結卵子の預かり期間は満45歳の誕生日まで
学会の推奨では、凍結卵子のお預かりおよび、ご使用期間は満45歳の誕生日までとされています。
それ以上の延長保存については、妊娠年齢の安全性を考慮し、50歳まで相談していただくことが可能です。 また、本人が破棄の意思が表明されたり、お亡くな りになった場合はただちに破棄します。
3,健康状態によっては採卵できないこともあります
問診の結果、健康状態が採卵(将来の妊娠)に望ましくないと判断した場合、
採卵をお断りすることがあります。
4,凍結卵子の保存期間は 1年単位で契約更新が必要
延長の際には延長申込書と費用、同意書が必要です。
1年を過ぎても更新手続きがない場合は、「延長希望なし」と判断し、凍結した卵子を
破棄させていただきます。
5,凍結卵子を使用する場合は体外受精(顕微授精)を行う
顕微授精までに進むステップは、通常の体外受精と同じです。 届いた精液に精子がいることを確認したら、凍結した卵子を融解して受精。
うまく受精し、「受精卵」になったら培養して子宮に移植します。
複数の受精卵ができた場合は、次の妊娠に備えて再度凍結保存しておくことが可能です。
受精方法は「顕微授精」 を行います。
6,精子提供者は原則として 婚姻または内縁関係の相手に限る
これは生まれた子どもの福祉を守るためのルールです。
提供者が独身なら「認知」という方法が取れるのですが、万が一ほかに家庭やパートナーがいる
相手だと子どもの親権を巡って裁判沙汰になることもありますからね。
また、受精卵を作成し凍結保存をしても、離婚や死別などで別れてしまうと、その受精卵は破棄になります。また凍結保存した卵子を、本人の生殖以外の目的で使用することはできません。
7,原則的に凍結卵子の持ち出しは 不可能
技術的には可能なのですが、悪用されるリスクを防ぐため、そして運搬時の補償ができないため基本的にはお断りしています。
転勤などでどうしても他院への運搬が必要な場合は、 凍結保存を行ったご本人またはパートナーの方に自己責任で運んでいただきます。
8,卵子凍結による将来の妊娠率は15~35%程度
凍結保存を行うのは、精子を受け入れる準備が整った成熟卵子のみ。
しかし、採卵時の年齢により、受精率と妊娠率 に差があります。
卵子の生存率とその後の着床率を考えると、5個以上(可能なら10個以上)の卵子を
凍結保存しておくことが望ましいと考えられます。
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